心臓も細胞でできていますから心臓を栄養する血液が必要です。心臓内には血液が充満していますが残念なことに心臓内の血液からは心臓は栄養をもらえません。心臓に血液を供給する血管を冠動脈といいます。心臓から大動脈に出てすぐに左右1本ずつの血管が心臓を包むようにして心臓の外側から内部に向かって走る血管を冠動脈といいます。左にでた血管は直ぐに2本に分かれて合計3本の冠動脈が枝分かれして心臓に血液を運びます。冠動脈が動脈硬化などによって狭くなると、心筋（心臓壁を構成する筋肉）に送られる血液量が減少します。安静時には血圧、心拍数が低く心筋が必要とする血液は少なくて済みますが、急ぎ足で歩いたり、階段を駆け上がったりなどの労作にて心臓の運動量はあがってもそれに見合うだけの血液が供給されないことで心筋が酸素不足となります。これが労作性狭心症でこのときの痛みが狭心痛です。安静にすると5分ほどで症状は改善します。
痛みの特徴としては圧迫感や絞扼（こうやく）感などがあり、前胸部、みぞおち、肩、頸などに生じます。歯やのどが痛むケースもあります。痛みの持続は多くの場合、数分までです。
労作性狭心症が疑われたら冠動脈の評価が必要です。提携医療機関にお願いして冠動脈CT検査にて動脈硬化の評価をしてもらい、場合によってはカテーテル検査、治療が必要となることもあります。頻回に狭心症発作が起こる場合を不安定狭心症と言って血管が完全閉塞一歩手前で緊急入院が必要となることもあります。

冠攣縮性狭心症は、典型的には夜、睡眠中、明け方に胸が苦しく押さえつけられたような発作が起こります。多くの場合、冠動脈が一過性に痙攣（けいれん）を起こして収縮し、血流が一時的に途絶えるために生じると考えられています。痛みの性質や部位などは労作性狭心症と同様です。冠動脈の攣縮（痙攣性の収縮）も、動脈硬化の進行過程にみられる現象と考えられています。
このような症状がある場合、早めに受診されることが大切です。

心筋梗塞とは、動脈硬化が進行して冠動脈にできていたプラーク（血液中のコレステロールや脂肪からできた粥状の物質）が冠動脈を塞いでしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死した状態をいいます。前触れとして狭心症発作があった方が半分、初回の胸痛発作が半分といわれています。突然、胸が焼けるように重苦しくなり、締め付けられ押しつぶされるような症状が現れます。冷や汗が出たり、吐き気があったりすることもあります。この発作は長く続き数時間に及ぶこともあります。このような場合は、至急救急車を呼んでください。治療は冠動脈内に詰まった血栓を血栓溶解薬（tPAなど）で溶かす治療法や、バルーンが先端についたカテーテル（細い管）を血管内に挿入し、詰まった部分を拡げたり、再閉塞を防ぐためにステント（筒状の金網）を血管内に留置したりするインターベンション治療があります。治療が早ければ早いほど予後は良好なことが多いです。

心臓弁膜症とは、心臓にある4つの弁がありますが弁に障害が起き、本来の機能や役割を果たせなくなった状態をいいます。大きく分けて、弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なために血流が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。
典型的な症状は、息切れ、胸の痛みや違和感、めまい、意識を失う、疲れやすいなどがありますが、心臓弁膜症に特有なものはありません。症状があっても、加齢に伴う体の変化に似ていることから、見逃されがちです。
「健康診断などで心雑音が指摘された」、「心エコー図検査で心臓弁の異常を指摘された」という場合には、早めに専門医を受診してください。
特に多いのが、僧帽弁腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症や、先天性二尖弁による大動脈弁狭窄症などあります。手術が必要な時期を逃さないようにすることが大切です。

不整脈は病名ではなく病態の総称で、心臓の刺激伝導系と言う電線が異常になったり、心臓が異常な興奮を起こしたりする状態をいいます。大きく分けて、脈がとぶように感じる期外収縮、脈が速くなる頻脈、脈が遅くなる徐脈、脈がバラバラに打つ心房細動があります。不整脈は治療の必要のないものから危険なものまで様々です。不整脈は健康成人では一般的で、不整脈がありながら自分では気付かず、身体検査などではじめて不整脈を指摘される方もいます。
一方、不整脈によっては心不全や失神発作を起こしたり、脳梗塞を併発したりするものもあります。特に高齢化に伴い増加している不整脈が心房細動です。脈がバラバラに打ち心不全や脳梗塞の中でも一番厳しい脳梗塞の原因となります。心拍数のコントロールや脳梗塞予防の内服治療があります。それに加えて心臓カテーテルアブレーションと言って規則正しいリズムに戻す治療もあります。心房細動になっても動悸などの自覚症状もない方もおられます。出来れば自己検脈ができればと思います。
不整脈を指摘されたときや脈の不整、激しい動悸を感じたときは受診しましょう。不整脈の評価として、不整脈の原因となる心臓病の有無を調べるための心臓エコー検査、長時間心電図などの検査があります。その他、甲状腺ホルモンの検査も必要な場合行います。経過をみてよい不整脈なのか、危険な不整脈に発展するものかなどの評価が必要です。

心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますが、心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎など様々な心臓の病気によって、このポンプの働きに障害が生じ、色々な症状を引き起こしている状態を心不全といいます。
心不全には大きく分けて2つのタイプ、収縮不全と拡張不全があります。現在それぞれのタイプでの最適な治療が提唱されています。また心不全は発症の仕方で急性期、慢性期にわけられます。急性心不全は、短期間で激しい呼吸困難などの症状が現れることから、重症の場合、命を失う危険性が高くなり緊急入院が必要です。一方、慢性心不全は、ちょっとした動作でも動悸や息切れがしたり、疲れやすくなったりします。咳や痰が止まらない、むくみが出るといった症状が現れることもあります。
慢性心不全は高齢になるほど発症する方が増えてくる傾向があります。息切れなどの症状のある方は、年のせいとは思わずにご相談ください。

主に足の血管に起こる動脈硬化で、下肢への血流量が動脈硬化などにより減少し、足に冷感やしびれ、歩行時に痛みを感じる、という症状があり、典型的には同じ歩行距離で再現性をもって下肢痛が起こり、間欠性跛行ともよばれています。当院では下肢への血流検査を行っていますので、思い当たる症状のある方はお話下さい。
重症化すると手足に潰瘍ができ壊死することもあります。特に50歳以上の男性に多い傾向があり、肥満・高血圧・糖尿病・喫煙などが原因と考えられています。更なる検査が必要と判断した方には専門医を紹介いたします。閉塞性動脈硬化症を発症した場合には、下肢動脈だけでなく全身の血管も動脈硬化が進んでいる可能性が高いので注意が必要です。

日本高血圧学会では上の血圧である収縮期血圧（心臓が収縮したときの血圧）が140mmHg以上、または下の血圧である拡張期血圧（心臓が拡張したときの血圧）が90mmHg以上を高血圧としています。そのまま高血圧の状態にしておくと脳や心臓の血管が動脈硬化を起こし、脳卒中や心臓病、腎臓病などの重大な病気を発症する危険性が高まります。日本人の高血圧の約8～9割が本態性高血圧（原因をひとつに定めることのできない高血圧）で、遺伝的素因（体質）や食塩の過剰摂取、肥満など様々な要因が組み合わさって発症します。中年以降にみられ、食生活を中心とした生活習慣の改善が予防・治療に非常に大切です。

脂質異常症とは血液中の「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪（トリグリセライド）が増えたり、「善玉」のHDLコレステロールが減ったりした状態のことをいいます。この状態を放置していると動脈硬化がゆっくり進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患を招くリスクが高まります。
脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが関係しているといわれています。「内臓脂肪型肥満」ではLDLコレステロールや中性脂肪が多くなり、HDLコレステロールが少なくなりやすい傾向があります。また、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」と呼ばれているものもあり大半の方は内服治療が必要です。